行政書士は「書類屋」か「法律家」か
こんにちは。福岡市東区の「やどりぎ行政書士事務所」です。
「カバチタレ」という、行政書士の代名詞のようなマンガをご存知でしょうか。
【行政書士】の名を世に知らしめた人気作ですが、若干古くなったので、若い世代は知らないかもしれません。
多くの現役行政書士は読んだことがあるでしょうし、中には行政書士のキッカケになったとか、バイブルにすらなっているという話もチラホラ。
でも、ぼくは見たことがありません。今後も見る予定はありません。
見れば絶対に面白いに決まっているんですけれども、どんな職業漫画も、面白く成立させるためには『ファンタジー要素』が必要不可欠です。
そして、ぼくにとって行政書士というのは100%現実になってしまったので、いっさいのファンタジー要素を取り除きたいと、そう考えるからです。
さて、このカバチタレにおけるファンタジー要素。つまり漫画を盛り上げるおもしろ成分ですが、どうやら、「本来、弁護士がやるような事件を、行政書士が華麗に解決」というものみたいです。
(じっさいに読んでいないので、あまりエラそうなことは言えませんが)
たしかにそれは見ていて面白いだろうな、と思います。
ファンタジーとはつまり意外性。かの名作「ブラックジャック」だって、神業天才外科医なのに医師免許を持っていない(つまり厳密には医者じゃない)というのが、面白みでした。
探偵モノが面白いのだって、警察じゃない民間人が、単身事件を解決するからです。
しかし、ファンタジーはファンタジー。医師免許を持ってない人間が人を切ったら傷害罪ですし、組織力皆無の民間人が殺人事件を解決するなんて、夢物語でしかありません。
このカバチタレにおけるファンタジー要素……「行政書士が弁護士のかわりに事件解決!」という部分は、一部の弁護士に忌み嫌われていると聞きました。
「非弁行為を、当たり前のように描くな!」と。
漫画は漫画、ファンタジーなんだから、そうムキにならなくても……と、割り切れないだけのチカラが、人気作品にはありますから、その気持ちも少しは理解できます。
現役行政書士の中には、「カバチタレを読んで行政書士になった」と明言している先生も居るくらいですしね。
さて、そこで問題になるのが、「行政書士は、法律家か否か」。
カバチタレに対して否定的な意見の中には、「代書屋のくせに法律家をきどるな」というものが散見されました。
そもそも行政書士は、その名前が表す通り、成立した当初は、書士……つまり文書・書類を作成する職業でした。
だから、古い世代の人は行政書士のことを「代書屋」と、若干蔑称的なニュアンスで呼ぶことがあります。
それもあって、ネット上の一部の弁護士やその他の士業の中には、「行政書士が法律家ヅラするな」という姿勢を隠そうともしない人も居るようです。
しかし、行政書士の資格試験では、民法だって学びます。判例も事例も学習します。
法律家の定義がどんなものかは諸説紛々でしょうが、膨大な法律条文をすべて網羅・暗記し、歩くデータベースになっている人だけを法律家と呼ぶモノでもないでしょう。
法律という、無機的な文章を、生活という、人々の有機的な暮らしに、柔軟に適応させる専門家……それが法律家であるはずです。
それを考えると、法律家とは? という問いに対する本当のアンサーは、「相応の資格保有者である」と、杓子定規なものではなく、「法律の知識をうまく使いこなし、依頼人のニーズに応えられるプロ」と言うべきです。
逆に言えば、たとえ資格があっても、本当の意味で消費者のニーズに応えられていなければ、それはプロの職業人とは言えません。
カバチタレがどうして人気があったのか。
それは、人々の日常に起こるトラブルや事件を、庶民目線で解決していったからではないか、と想像します。
行政書士は、特権階級ではありませんし、エリートとも言い難い、庶民よりの職業です。
扱う業務も、日常的なものばかり。
だからこそ、庶民目線で、日常的な『法務』に取り組める、町の法律家となり得るのでは……と考えます。
もちろん、上級資格者に負けないよう、常日頃からの切磋琢磨を怠らない、という条件ありきですけれども。