養育費を公正証書にするべき 4つの理由
おはようございます。福岡市東区のやどりぎ行政書士事務所です。
これまでに福岡の浮気・男女問題を多数引受け、たくさんの離婚や別居を見てまいりました。
とくに浮気問題ともなると、まずは調査をして証拠を確保。
相手の嘘をあばいたり、不倫相手から慰謝料を請求したりと、頭の痛い問題が山積みです。
そして、なんとか離婚にこぎつけても、その後もずっと続く問題があります。養育費の問題です。
離婚することで、パートナーとの関係はリセットされるんですが、その後も子供のパパやママであることは変わりません。
別居はしても、子供にとって親は親。育児の責任は成人まで続くのですが、離れて暮らすと、子供に対する責任感は薄れてしまうもの。
ましてや、新しい再婚相手とめぐりあったり、その相手との新しい子供ができればなおさらです。
養育費の不払い問題は、離婚問題をなんとか切り抜けた人たちを襲う、第二の試練と言ってもいいでしょう。
ただでさえ、シングルで子育てするのはおそろしく大変です。
なのに、きちんと合意したはずの養育費が、滞ってしまう……それは大きな大きなストレスです。
無用なストレスを回避するためにも、養育支払いの合意は『公正証書』にするべきです。
その理由を4つご紹介しましょう。
①すぐに強制執行(差押え)が可能!
養育費の未払いを強制執行するためには、債務名義が必要です。この債務名義を用意するには、裁判所に対して手続きを行う必要があるのですが、養育費支払いの公正証書は、そのまま債務名義となり、手間が省けます。(民事執行法22条5項)
②養育費の一部でも未払いがあれば、次の支払期の分に関しても、差押えが可能!
通常であれば、取り決めた支払期が来るたびに、いちいち差押えの手続きが必要ですが、これを一回の手続きでその後も効力が続くように出来ます。(民事執行法30条1項)
③相手の給料の半分まで差押えできる!
一般的には、債務名義で相手の給料を差押えようとしても、全額というわけにはいかず、1/4までと制限されています。しかし、養育費に関しては1/2まで認められています。(民事執行法152条1項および3項 )
④未払いの相手の財産開示を要求できる!
令和元年の民事執行法改正により、市町村や日本年金機構に対して、債務者(未払い相手)の財産についての情報開示を請求出来るようになりました。(民事執行法197条1項)
市町村や年金機構に対してどんな情報が請求出来るか。一番は『勤務先情報』でしょう。「働いていないから、収入がなくて支払えない」というウソが通せなくなるわけです。
以上、養育費を公正証書にするべき4つの理由を説明いたしました。
4つの理由は、そのまま依頼者さまの4つのメリットであるとも言えます。
時間の経過で、人はパートナーとの不仲の苦しみも、離婚で負った傷跡も、少しずつ忘れることが出来ます。
しかし、同様に、離婚のときは子供に対して確かにあった『育児の責任感』や『慈しみの気持ち』も、時間の経過とともにやがて薄れ、毎月支払う義務の重たさだけが残り、養育費を払うのが馬鹿らしく感じてしまう……
これも、ある意味人間としての弱さです。
だからこそ、父と母おたがいのためにも、何より一番は子供のためにも、養育費の支払いに関しては、正当な強制力による義務付けをなしておくべきなのです。
最後に、公正証書を作成したときの段取りをご説明します。
公正証書を作成したら、養育費支払いの義務者(だいたいは父親)に対して、公正証書の謄本(写し)を交付送達し、強制執行が出来るという内容を記した『執行文の付与』を受けておくようにします。
これにより、もし相手が支払いを怠ったときは、支払いの権利者(多くは母親です)は、直ちに強制執行を申し立てることができます。
これは、なにも「元ダンナが支払いをサボったらすぐに差押えてやる!」……とケンカ腰になるのではなく、「イザとなれば、こっちもやることしてやるから」という意思表明によって、相手に義務を履行させる冷静なプレッシャーとなり得るということです。
特に、浮気調査をして証拠をとった直後の離婚手続きでは、相手は自分に非がある分、ある程度の要求は素直に飲んでくれます。
有利な交渉が出来るうちに、しっかり養育費の支払いについての公正証書を取っておくようにしましょう。